あなたのテーマでディープな函館 「教会・修道院」

元町の4教会を巡り、伝統と音楽に触れる

111002M01.JPG函館山の麓、元町にはいくつもの教会が隣り合うようにして建ち、エキゾチックな街並みを形作っています。宗派の違う教会がこれだけ集まっているのは、世界的にも珍しいのだそう。その多彩な伝統をもつ4つの教会が、初めて合同で企画した「元町・教会めぐり~そのルーツと音楽に触れる」という催しが、2011年10月に行われました。

4つの教会を順に歩いて訪ね、それぞれの教会で用意された30~45分のプログラムにより、その由来や音楽に触れるという、またとない貴重な体験。東日本大震災や台風豪雨の被災者のために、祈りもささげられました。約300人の参加者で、聖堂内に入りきれないほどの熱気にあふれていたこの企画、全行程をレポートします。

※2012年は9月29日(土)に開催。詳細はこちらをクリック。2013年の開催はありません。

 
◆日本基督教団函館教会

111002M02.JPG●起源 1874年(明治7年)、アメリカメソヂスト教会監督のM.C.ハリス宣教師が来函、函館美以(みい)教会を設立
●宗派 プロテスタント
●現建物の建築 1931年(昭和6年)

教会めぐりのスタートは、八幡坂を少し上ったバス通り沿いにある日本基督教団函館教会から。緑の屋根や窓枠が白壁に映える、ゴシック調のデザインが印象的です。開始の13時30分の何十分も前から、足を運ぶ人の姿が続々と見られました。

まず、松本牧師からこの教会の歴史やキリスト教諸教派の関係などについての丁寧な説明があり、なごやかな雰囲気に。「プロテスタント教会の会堂は、聖なる空っぽの空間を めざして、装飾を極力排しているのが特徴です」というお話のように、スッキリとした内装で、天井は高く、広々としています。先のとがった縦長の窓から、秋の光が明るく差し込んでいました。

正面右には、存在感のあるパイプオルガン。この日は、パッヘルベルやバッハなどのコラールが演奏され、堂内は豊かな響きでいっぱいに。また、東日本大震災の直後から世界中で最も多く読まれた聖書の言葉をもとにした賛美歌「神はわがやぐら」などを一緒に歌い、祈りの気持ちを届けました。14時終了。

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◆カトリック元町教会

111002M05.JPG●起源 1859年(安政6年)、フランス人メルメ・カション神父が来函、高台に小聖堂を建築
●宗派 ローマ・カトリック
●現建物の建築 1924年(大正13年)

日本基督教団函館教会を出て、大三坂を上っていくと、頂に雄鶏のついたゴシック調の大鐘楼が見えてくるのが、カトリック元町教会。参加者は列をなして、急坂を移動します。開始の14時30分までに、入場が終了。聖堂内はアーチを描いた美しいブルーの天井で、その壮麗さにまず目を奪われます(一番上の写真)。

「現聖堂は、大正10年の大火で失われたものを、ベルリオーズ司教の尽力で再建したものです。その際、ローマ法王から中央祭壇、左右の小さな祭壇、壁の〈十字架の道行き〉の木彫像が寄贈されました。正面の十字架上のイエス像、一番左の大天使聖ミカエル像など、とても芸術性の高いものです」と説明するのは、教会信者で、今回の企画の実行委員でもある小原さん。ギリシャ正教会は偶像崇拝につながると立体的な像を排除したのに対し、カトリックではそれを容認したため、優れた作品が残されました。

演奏プログラムは、1400年前から歌い継がれている「グレゴリウス聖歌」を中心としたもの。周囲の見事な彫像を眺めながら、オルガンと混声の聖歌隊による音楽に耳を傾けました。15時終了。鐘楼の鐘が打ち鳴らされる中、次の教会へ。

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◆日本聖公会函館聖ヨハネ教会

111002M08.JPG●起源 1874年(明治7年)、英国聖公会よりデニング司祭が来函、民家を借りながら函館聖公会の活動を始める
●宗派 英国国教会(聖公会)
●現建物の建築 1979年(昭和54年)

カトリック元町教会からは、斜め向かいに位置する聖ヨハネ教会。四方に張り出し、上から見ると十字形である聖堂が目をひきます。中に入ると、素朴な木の十字架、装飾のないシンプルな木の内装で、心落ち着く雰囲気です。

15時15分、パイプオルガンの演奏が静かに流れ、続いてベルが鳴らされる中、被災されたかたがたのために祈りが捧げられました。藤井牧師のお話では、「四方に窓と扉のある聖堂の十字形には、神の恵みと祝福が四方に開かれるようにという意味があります。活動を始めた明治時代から、教育・医療・貧民救済の3つに力が注がれてきたのです」とのこと。正面には、窓ガラス越しに函館の街と緑の木々が眺められ、その言葉の意味が実感できました。

この日は、信者のかたを中心に「夕の礼拝」が行われ、ペリー提督来函時に用いられたであろう聖歌などを、一緒に歌いました。15時45分終了。

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◆函館ハリストス正教会

111002M11.JPG ●起源 1858年(安政5年)、ロシア領事ゴシュケヴィチが来函、ロシア領事館付属聖堂として始まる
●宗派 ロシア正教会
●現建物の建築 1916年(大正5年)

元町・教会めぐりの最終地は、聖ヨハネ教会と道をはさんで隣り合う函館ハリストス正教会。屋根の上に小さな丸屋根(クーポラ)を冠する、ロシア風ビザンチン様式の建物が参加者を迎えます。

16時、複数の鐘を組み合わせて鳴らす特徴的な響きに導かれて、礼拝がスタート。高い丸天井の下、ろうそくの炎がゆらめき、香が焚かれる荘厳な雰囲気の中、無伴奏の四部合唱の聖歌と、歌うような司祭の祈りの言葉が繰り返されました。

祭壇や壁には、神や聖人を象徴としてかたどったイコン(聖像)が描かれ、祈りの場を見守っています。礼拝のあとには、ニコライ・ドミトリエフ司祭のお話。ロシア十字の下部にある斜めの線の意味などに触れたのち、「宗派の違いを超えて実現した今回の催しは意味が大きい。形は違っても、まずそれぞれが自分自身の祈りを捧げることが大切です」と締めくくりました。

16時45分、すべての催しが終わって解散。

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4つの教会の異なる伝統・音楽・建築に触れ、夕暮れてきた空の下にたたずむ姿を改めて眺めると、
「異国情緒」の持つ意味が今までとは少し違って感じられました。

それぞれの教会は、ふだんから外観を見学できるとともに、拝観して祈りを捧げる人に開かれています。

※編集室M 2011/10/1取材(主催者の許諾を得て、取材・掲載)、2012/9/18更新