函館の正月料理「くじら汁」を味わう
111227M00.JPG「くじら汁がないと正月を迎えた気がしない」と函館出身の人は言います。

くじら汁とは、「塩クジラ」と山菜、野菜で作る汁もの。東北を中心に、日本中で広く食べられていますが、正月の定番料理として定着しているのは、函館近辺のみなみ北海道だけだそうです。

函館の家庭料理としておなじみのくじら汁ですが、飲食店で供されることは意外に珍しいよう。このくじら汁を通年提供している「茶房 菊泉(きくいずみ)」の店長・赤坂泉さんに、菊泉流くじら汁の作り方を教えてもらいました。



◆縁起のいいクジラを使った正月料理、くじら汁

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元町にある「茶房 菊泉」は、1921(大正10)年に建てられた酒問屋の別宅跡をほぼそのままの姿で利用した軽食喫茶店。店内には囲炉裏も切られ、調度も古いものをそのまま使われていて、「まるでおばあちゃんの家のよう」とお客様から言われるそうです。

もともとくじら汁は、塩クジラや山菜といった保存のきく食品で作った、体が温まる冬の食べ物でした。「正月から大きなものをいただいて縁起がよい」とか、「ニシンを岸に集めるクジラを食べて豊漁を祈る」といった意味合いも込めて、正月に食べられるようになったのではないかと考えられています。

大鍋にどーんと作って、お正月の間、食べるのが函館流。その作り方や材料、味つけはそれぞれの家庭で引き継がれていて、家ごとにさまざまな違いがあるようです。


◆菊泉流くじら汁は、あっさりとした塩味ベース
赤塚泉さんは、長野県軽井沢のご出身。函館らしいメニューを出したいということで、道南の人に教わりながら、現在の菊泉のくじら汁を編み出してきました。味つけは塩、みそ、しょうゆと家庭によっていろいろあるようですが、菊泉のものは塩味をベースとしたあっさりとした作りです。

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材料は、ダイコン、ニンジン、山菜(フキ、ワラビ、ゼンマイ、タケノコ)と、「塩クジラ」。塩クジラは、クジラの表皮・脂皮を塩蔵した保存食材で、本日は立派なミンククジラの冷凍もの。 

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塩クジラは黒い皮を付けたまま 2cm×4cm、厚さ2mm程度にスライスします。お椀1杯に5~6切れ位が入る分量です。野菜は食べやすい大きさに切って、だし汁で火が通るまで煮ます。塩クジラは別鍋に水を入れ、30分以上中火でゆでた後に、野菜の鍋に煮汁ごと入れます。別々に加熱すると、クジラは柔らかく、野菜は煮崩れず、汁は濁らずと、いいことづくめ。最後に塩と醤油で味を調えるとできあがり。1日寝かせて食べると、味も染みさらに美味しくなるとのことです。


◆クジラの独特の食感と香りを楽しみたい

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お椀からは、潮の香りが漂います。汁は、クジラから出た上質の旨みと野菜から出た甘みが溶け合い、優しい味わいを醸し出しています。クジラは噛むとかすかにクジラらしい香りが鼻に抜け、シャリシャリ・シャクシャクとした独特の食感。山菜の味わいも深く、食べたあとに体の芯から温まってくるのを感じます。

寒い日の観光の合間に、函館ならではの正月料理で体を温めてはいかがでしょうか。

茶房 菊泉
函館市元町14-5 0138-22-0306 10:00~17:00 木曜休
くじら汁 税込550円
赤飯とくじら汁のセット(お茶つき) 税込780円

※文・記者C、写真・編集室M 2010/12/21取材、2016/1/3更新


【そのほか、くじら汁が食べられる店
おでんの冨茂登
函館市本町4-9 0138-55-7799 17:30~22:30 月曜定休
寿司江戸松
函館市谷地頭町25-19 0138-23-0305 11:30~21:00 水曜定休
※どちらも提供は年末から年明けの期間限定