函館を語る > あがた森魚さん

あがた森魚さん 函館は星座と街灯りの混ざりあう ちょっと宇宙に近い街
篠原哲雄さん

2009年に開港150年を迎えた函館の街には、歴史と現在と未来がぎっしりと詰まっています。昨今の歴史ブームで、幕末から開国にいたる波乱の時代と、そこに生きた坂本龍馬、土方歳三、高田屋嘉兵衛といった人々にも関心が高まっています。
150年前の開国は新たな歴史の始まりであり、函館もまた全国に先がけて新しい歴史を刻んだ貴重な港町でした。
わたしは、その函館の港を見渡せる函館山ロープウェイ山麓駅のすぐ脇で、1960年代初頭から中学・高校時代の6年間を暮らしました。ちょうど開港100年目の頃です。そこからは陸繋島として繋がる瀟酒な街並み、青函連絡船、函館ドックなども見え、函館港から津軽海峡までが一望できました。
学校帰りに湯の川から市電に乗り、以前丸井デパートなどがあり函館の中でもとりわけハイカラだった十字街で電車を降り、二十軒坂を駆けのぼると、今日も一日暮らした函館の街が一望できるのです。30万人ほどの人々が暮らす街の眺望に、様々な想いやイメージがひろがりました。自分はいつかこの街から出て、東京へいって音楽をやろうと思いました。この街のもつ風土や歴史や人々の叡智が自分に音楽をやることを教えてくれたことを思うと、奮い立つような勇気が湧いてきたものでした。
函館山ロープウェイで山頂に昇ることは年に一度か二度くらいのことでしたが、そこから見える夜景は、全ての人を宇宙にすら思いを馳せる詩人にさえするほどでした。その夜景は、いまも変わりません。

函館山へと登る教会と、汽笛と、石畳のある全ての坂道、山道、そして函館山ロープウェイは、かけがえのない私の青春時代の伴侶でした。そして、これからも変わることなくそこにありつづけるはずです。
谷村志穂さん
森田芳光さん