海、山、歴史を楽しむ 「函館の坂」のご案内
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もしも、あなたがフェリーや遊覧船に乗った時、あるいは車で函館港沿いに走るともえ大橋をドライブした時、どこかの地点ではっとして息を呑む美しさを見つけることでしょう。

それは、あなたが函館山を見、視線を少し下ろした時に現れてくる、海岸に続く何本もの真直ぐな坂道。そして、坂に挟まれて、まるでおもちゃの如く、見る者の現実感を喪失するような姿で雛壇に座っている建物の数々。

この函館山にへばりついた僅かなキャンバスの中に、あなたを魅了する函館独特の文化が凝縮されているのです。
中央埠頭から見た、光る弥生坂。    

坂と伝統的建造物の織りなす絵のような風景
函館山のふもと、港に向き合う界隈は、一般に「西部地区」と呼ばれ、今では函館の一部という位置づけになっています。しかし、江戸時代から明治時代にかけて、函館といえばこの狭い範囲の地域を指していたといっても過言ではない程、ここには銀行、海産商、病院、住宅、商店、歓楽街、寺院等々、様々な機能が集約されていました。

それらの建物には、当時の日本の建築技術を駆使して建てられたものも多く、また、和洋折衷住宅という、日本の他地域ではほとんど見られない、独特の建造物も数多くあります。これらが混在して、ほかの都市では見られない、街全体がまるで画家が描いた絵のような風景を見せてくれているのです。

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港へ至る真直ぐな弥生坂。心が洗われる風景。
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八幡坂。途中にはこんな素敵な佇まいも。


大火の教訓から、広く真直ぐな坂道が生まれた
それでも、この美しさは自然にできたわけではありません。明治時代から幾度となく街を襲った大火によって、多くの人と家屋を失った経験から、道路は入り組まず真直ぐに道幅も広くして、延焼を阻止しようという、防衛策から生まれたものなのです。
たとえば二十間坂は、明治12年の大火の後、防火帯として道幅が二十間(約36m)に広げられたことからつけられた名前。そのほか、基坂、八幡坂、護国神社坂など幅の広い坂を設けて、火止めとした背景があります。
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ベイエリア・朝市へと続く二十間坂。
どの坂にも坂標があります。


歴史がたっぷり詰め込まれた函館の坂
そして、函館の坂の周辺には、当時日本の中でも先進的な文化が育まれていきました。

二十間坂と大三坂に接する、日本初のコンクリート寺院「東本願寺函館別院」、大三坂上に位置する教会群。ここには、日本に初めて作られたロシア正教会の教会である「函館ハリストス正教会」や、ローマ法王より唯一寄贈された祭壇を持つ「元町カトリック教会」などがあります。
記念撮影の定番となっている八幡坂のつきあたり周辺は、明治時代の一時期は国内でも類を見ない、三つもの女子学校が並ぶ文教地帯でした。

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基坂。
正面に旧函館区公会堂、左手には旧イギリス領事館が。
 
元町公園がある基坂には、明治~大正時代の豪商・相馬哲平氏の多額の寄付を基に建てられた「旧函館区公会堂」。
弥生坂上には、旧幕府軍が箱館戦争前夜、最後に清遊した「咬菜園」跡地や、幸坂にはドイツ人が設計した「旧ロシア領事館」。千歳坂上には、箱館戦争で亡くなった旧幕府軍の遺体を収容したり、幕末から明治時代の多くのドラマの舞台となった「実行寺」ほかの寺院群等々。
函館の坂には、歴史がたっぷり詰め込まれています。


函館山を見上げ、港を見下ろす、坂の楽しみ
また、坂の途中にある古民家をよく見ると、函館港に向けて大きな窓を配している家をいくつも見つけることができます。この方向は北ないし北東にあたり、寒さを考えると普通は窓を設置したくない方角であるはずです。それでも大きな窓を作ったのは、粋な函館港眺望のためなのか、あるいは入港する船舶のチェックをするためなのか。その理由を想像しながら見るのも、函館の楽しさのひとつであります。

さぁ、坂を上ってみましょう。途中にある小さな古民家やそれを改造した飲食店などを見ながら、ゆっくり上りつめて振り返ると、そこには日本にも類の無い、視野が拓けた直線の坂道が、あなたの心を爽快にするでしょう。今まで味わったことのない街の造形美に、坂めぐりの疲れもすぐに忘れてしまうはずです。
そして気がつくと、あなたはどの街にもない函館の魅力を知ってしまうことになるはずです。
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日和坂の風情のある建物と街灯。

※記者J 2011/4/18公開


函館の主な坂一覧(坂の名前をクリックすると詳しい説明が見られます) 参考資料/はこだて検定テキストブック

函館の主な坂一覧 青柳坂あさり坂護国神社坂谷地坂南部坂二十間坂チャチャ登り大三坂八幡坂日和坂基坂東坂弥生坂常盤坂姿見坂幸坂千歳坂船見坂魚見坂

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