市電の十字街電停のほど近く、交差点の一角にキノコ型の塔があります。これは、市電のポイントを切り替えるために使用されていた建物です。
市電の進行方向を変える「ポイント」は、かつては交差点近くの信号手詰所に配置された信号人が車道を横切り、軌道内で切り替え作業を行っていました。やがて、道路上の車の往来が多くなったことから、1938(昭和13)年8月に宝来町交差点のポイントが電動化。それを皮切りに登場したのが、キノコ型が特徴の操車塔です。
往時は十字街のほか、宝来町、函館駅前、松風町、五稜郭公園前、ガス会社前にほぼ同じ形の操車塔が建てられ、始発から終電まで職員が詰め、ポイントや信号の切り替えに当たっていました。昭和30年代に入ると、架線に取り付けられた「トロリーコンダクター」をパンタグラフで操作し、ポイントや信号を自動的に切り替えられるように改良が随時行われ、操車塔は徐々にその役目を終え、撤去されました。
現在唯一残されている十字街の操車塔は1939(昭和14)年9月に建てられたもので、高さ 5.4m、制御室直径1.9m。現役時代は斜め向かいの北洋銀行十字街支店の前に建てられており、職員が制御室の中から電車の行き先を確認しながら、手元のスイッチでポイントや電車用信号の切り替えを行っていました。1995(平成7)年6月に操車塔としての役割を終えましたが、同年9月に現在のアクロス十字街前に移設され、形態保存されています。