函館名物にもいろいろありますが、中でも函館っ子の自慢は新鮮な旬のいか。朝水揚げされたものが、すぐにホテルや街の食堂の朝食に並び、その透き通る身の美しさとコリコリの歯ごたえに、だれもが驚きの声を上げます。そのほか、いか飯、おつまみ、おかずと、函館のいかの魅力は尽きません。
湯の川温泉の旅館料理長の実演&レクチャーで披露された、いかづくしの料理の数々を徹底レポートします。プロならではのアイディアにあふれた料理をお楽しみください。
◆老舗割烹旅館「大黒屋旅館」料理長の実演を間近で
1918(大正7)年創業、湯倉神社からほど近い老舗割烹旅館「
大黒屋旅館」が今回の会場。料理長の橋田政美さんと、本日の主役・色が濃くてツヤツヤのいかが登場すると、会場のテンションは一気に高まります。
実演を近くで見ようと、参加者が真剣な表情で見守る中、鮮やかな手さばきで調理が進みます。
●いか細造り(いか刺し)
実演は、まずはおなじみ「いか刺し」から。大ぶりのいかの足をつかんで内臓をグッと引き抜いたかと思うと、耳をつかんで一気に皮をはいでいきます。早い早い! ツルリと白い身があらわれます。「手際のよさが鮮度を保つ大きなポイントだから、なるべくベタベタさわらないでね。むきはじめは、皮を2枚しっかりつかむのがコツだよ」。
料理長は、2通りのを切り方を披露。開いたままのいかに包丁の刃先で縦にスッスッと切り目を入れる「糸造り」と、短めに切ってから包丁でかるく押しながら切るポピュラーな作り方。前者はコリコリの歯ごたえ、後者はやさしい口当たりが楽しめます。
神業のような包丁さばきであっという間にいか刺しの山ができて、参加の皆さん、思わず拍手!
●簡単いか飯
2品目は「手作り簡単いかご飯(いか飯)」。一般的にいか飯は、生のもち米(普通の米を混ぜることも)を詰めてコトコト煮て作りますが、この日は手間なくできて、味がよくしみる方法を教えてもらいました。
「いかは、新鮮過ぎないもののほうが柔らかく仕上がるよ」。しょうゆ、みりん、砂糖で味をつけた煮汁でさっと火を通しておくと、ご飯を詰めやすくなります。驚きの手間なしテクニックは、「炊いたご飯を詰めること」。いかを下煮した煮汁を少し煮つめてご飯に混ぜ、味をなじませてから詰めて、口を楊枝でとじます。生の米から作ると1時間くらいかかりますが、この方法なら20分ほど煮れば出来上がり。
「生米からつくる場合は、空のペットボトルをカットして、飲み口のほうをじょうごがわりにすると、簡単に詰めることができるよ」と、手軽なアイディアも伝授してくれました。
◆いかをとことん味わう、スペシャルいかづくし御膳に大満足!

プロの手さばきをしっかり学んだあとは、お楽しみランチタイム。和食の技が光るいか料理がズラリ。目で、舌で味わいつくしました。
「焼きものの味つけは味噌ですか」「揚げ物のすり身は、いかのほかに何が入っていますか」など、熱心な質問も飛び出しました。
なかでも注目が集まったのが、いか刺しに添えられた薬味。「食べるラー油の、しょうがバージョンだと思ってください。牛肉(そぼろ)、しょうが、ねぎ、ラー油などが入っているオリジナルです」。いか刺しといえば「しょうがのすりおろし」がポピュラーな函館ですが、こちらの薬味もいかにマッチしていると大好評。皆さん「さっそく試してみます」と、笑顔をみせていました。
(左)いか刺しプチ食べ放題。鮮度抜群で身が透き通っています。この季節ならではの味、箸が止まりません。
(中)小鉢あえ物(いかすみ、オクラ、いか肝)。もっと食べたい、と思わせるミニミニ小鉢盛りが心にくいアレンジ。
(右)いかのけんちん蒸し。豆腐生地を詰めて蒸したもの。和風だしの上品な風味がいかを引き立てます。
(左)いかすり身のばくだん揚げ。えび、あさりも加えてうまみをプラス。見た目も楽しく、作ってみたいという声が続出。
(中)いかポッポ風鉄砲焼き。中にはゲソ、ネギを刻んだものを味噌バター味で。絶妙な焼き加減で、いか本来のうまみを凝縮。
(右)炊いたご飯に煮詰めたタレを混ぜる調理法で、煮込み時間を短縮。とっても簡単、かつ上品な味わいに。

この内容は、2012年に行われた体験型イベント「はこだて湯の川オンパク(温泉泊覧会)」のプログラム「旬のいか料理を美味しく」を取材したものです。なお、はこだて湯の川オンパクは、開催を終了しています。
※編集室N、編集室M 2012/7/1取材、7/12公開、2015/12/21更新