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函館で楽しむ、漫画「ゴールデンカムイ」の世界

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漫画「ゴールデンカムイ」は、明治時代後期の北海道を舞台に、莫大な黄金を巡る「生存競争サバイバル」を描いた超話題作です。ある目的のために一攫千金を目指して北海道で砂金を掘っていた元陸軍兵・杉元佐一(すぎもと・さいち)。彼はアイヌの少女・アシリパ(「リ」は小文字。以下同じ)との出会いをきっかけに、アイヌから奪われたという黄金の手がかりを追うことに。それと時を同じくして、北の最強部隊と呼ばれる陸軍第七師団や土方歳三らの勢力も黄金の行方を追っていた――というストーリーを軸に、アクション、謎解き、狩猟、グルメ、アイヌ文化、歴史など、さまざまな要素を詰め込んだ疾走感あふれる内容で人気を集めています。
 
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©野田サトル/集英社
 
281話からは舞台が函館に移り、息をもつかせぬ予想外の展開に。そこで、「ゴールデンカムイ」と函館の関わりがより楽しめるよう、当サイトで独自取材。「作中で描かれた場所・モノ」「古写真や絵図で見られる作中の風景」「ゴールデンカムイがより深く楽しめる函館のスポット」を、作品の世界と照らし合わせてご紹介します。
 
※作品で描かれる場所等と実際のスポットや事物とのかかわりは、編集部の推測に基づくものです
※「週刊ヤングジャンプ」での掲載内容をもとに構成しているため、コミック本未収録の内容を含みます
 
【1】「ゴールデンカムイ」に登場する函館の場所・モノ
 
函館では、五稜郭に立てこもる杉元や土方歳三らの勢力と第七師団とが激しく戦闘を繰り広げます。それ以前にも、函館の街が作中で一部描かれていました。
 
 
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江戸幕府の役所(箱館奉行所)を防備する城郭として築造され、戊辰戦争最後の戦いとなった箱館戦争では、榎本武揚や土方歳三ら旧幕府勢力の拠点となりました。
「ゴールデンカムイ」では、作品終盤の重要な場所として登場します。五稜郭を舞台に、箱館戦争を彷彿とさせるような激しい戦闘が行われます。
 
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五稜郭の郭内に正面から入る時に必ず通る一の橋(手前)と二の橋(奥)。この写真とほぼ同じカットが281話に描かれています。
 
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徳川幕府の役所として用いられ、箱館戦争では旧幕府勢力の拠点となった箱館奉行所。箱館戦争終結後、1871(明治4)年に解体されてしまいます(2010年に部分復元)。281話、永倉新八が五稜郭のなりたちをアシリパに説明するシーンで、かつてあった奉行所の外観が描かれています。
 
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五稜郭築造当時から現存している唯一の建物、兵糧庫(ひょうろうこ)。奉行所の米蔵として建てられ、大正時代には箱館戦争の資料館として利用されていました。282話で、土方歳三が「箱館戦争前からある建物」としてこの兵糧庫に言及しています。 
 
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西洋式城郭の特徴ともいえる構造物、半月堡(はんげつほ)。星型のとがった部分「稜堡」の側面を援護する目的のほか、郭内から人馬が出てくるのが外部から直接見えないようにする役目もありました。283話、土方歳三が五稜郭について「死角なくどの方向から来た敵にも反撃できる城郭である」と説明する場面で描かれています。
 
 
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日本最初のロシア領事館として、1906(明治39)年に完成。日本船の証明書やビザの発給などを行うとともに、領事の公邸を兼ねていました。翌年に大火で焼失したため、現在の建物は1908(明治41)年に再建されたものです。
陸軍第七師団に所属し、後にアシリパらを捜索することになる鯉登少尉が少年時代に誘拐された時、彼の三輪車が見つかった場所として198話で登場しました。199話では、ここに誘い出された父のもとに誘拐犯から要求を伝える電話がかかってきます(いずれもコミックス20巻収録)。
 
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(画像提供/はこだてフィルムコミッション)
 
281話でも重要な場所として再登場します。なお、旧ロシア領事館の姿は古写真でも確認できます(後述)。
※内部は非公開。2023年3月~2024年1月は改修工事のため、外観が見えない状態になっています。
 
◆函館山三十三観音
 
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湯の川の「湯川寺(とうせんじ)」境内にある三十三観音像。江戸時代、西国三十三観音の分霊所として函館山に設置されましたが、函館山が日本軍の要塞となった明治30年代に山から降ろされ、当時の湯の川村の人々の願いで湯の川地区に移されることに。その後、道路整備などの変遷を経て湯の川の「湯川寺」境内に安置されました。現在も参拝可能です。
288話でアイヌにかくまわれながら療養をしていた土方歳三が函館山で新政府軍に捕らえられる直前のシーンで、この三十三観音像のうち1体が意味ありげに描かれています。290話で、土方は観音像の裏のほら穴に軍艦「回天」の主砲を密かに隠していたのが明らかになります。
※現在の函館山には、第二次大戦後に設置された別の三十三観音像があります。
 
 
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1905(明治38)年の創業以来、函館近郊の大沼名物として親しまれるだんご。蒸気機関車に乗って大沼を訪ねる観光客のために作って売り出したのが始まりです。折で大沼湖・小沼湖を表現し、だんごを湖面の浮島に見立てています。
287話で、鯉登少尉が「大沼公園駅名物の大沼団子です」と鶴見中尉に差し入れています。
 
【2】函館の古写真や絵図で見られる作品中の風景 
(すべて函館市中央図書館所蔵のもの)
 
◆函館山と市街地
 
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現在の函館駅付近にあった建物の上から撮影されたと思われる「明治9年函館全景」。明治天皇の函館行幸の際に撮影され、当時の街並みの様子を鮮明に伝えています。
198話(コミックス20巻収録)でこれとほぼ同じ景色が描かれています。
 
◆函館湾
 
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函館山から函館市街地と函館湾を見下ろしたこの写真は、幕末~明治期に活躍した写真家・田本研三による「明治22年函館港全景」。横4分割で撮影されたパノラマ写真です。ガラス乾板(写真の原板)で残っているため、細部までかなり鮮明に写っています。
281話でこれとほぼ同じ景色が描かれています。
 
 
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1902(明治35)年、日本軍が津軽海峡防備のために函館山に築いた「函館要塞」。砲台には28センチ榴弾砲6門が配置されていました。この写真は、1922(大正11)年に撮影された砲台の様子。
198話で、ロシアの艦隊が津軽海峡を抜けて南下する際に「目の上のたんこぶ」となる存在として、1コマ描かれています。
 
◆函館電信局
 
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1885(明治18)年に発行された「商工函館の魁(さきがけ)」に描かれている電話交換所。
少年時代の鯉登少尉を誘拐した犯人から電話がかかってくる場面に関係して、198話・199話(コミックス20巻収録)に描かれています。
 
 
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幕末期、諸外国の脅威を警戒した江戸幕府が函館湾に築いた砲台。周囲を石垣で囲んだホームベース型の要塞で、現在の函館どつく(ドック)付近にありました。
288話で、けがの手当てを受けている土方歳三が弁天台場に言及した場面で描かれています。
 
◆回天 
 
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旧幕府の軍艦で、箱館戦争では主力として活躍。箱館戦争最終盤の箱館湾海戦でも奮戦しましたが、最後は新政府軍によって焼かれてしまいます。その当時に撮影されたのがこの写真。人々は「鬼の回天 骨ばかり」とはやしたとされています。
288話、「回天丸が燃やされたらしいわ」と町の人がうわさする場面で、残骸になった姿が描かれています。
 
◆旧ロシア領事館 
 
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現在は周囲に木が生い茂り、外側から全貌を眺めることができませんが、1936(昭和38)年に撮影されたこの写真では、建物全体を確認することができます。
 
【3】「ゴールデンカムイ」の世界が楽しめるスポット、函館市北方民族資料館
(*は画像提供/市立函館博物館)
 
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函館市電「末広町」電停そばにある函館市北方民族資料館は、アイヌ民族をはじめ、ウイルタ民族、アリュート民族など、日本より北の地域に住んでいた先住民族の資料を収蔵・展示する施設です。なかでもアイヌ民族に関する展示が充実しており、「ゴールデンカムイ」で描かれたさまざまな生活用具などの実物が見学できます。その一部を紹介しましょう。
※これらの収蔵物が作中のモデルになっているわけではありません
 
◆鉢巻
 
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アイヌの少女アシリパは、アイヌ文様の刺しゅうを施した紫色の鉢巻きでおなじみ。それに似た鉢巻が展示されています。
 
◆衣服 
 
アイヌ民族の衣装はおもに、動物や魚の皮、樹皮や草の繊維、木綿の3種類の素材から作られており、そのほかに交易で入手した和人や海外由来の服も用いていました。こちらではさまざまなアイヌの衣装を入れ替えながら展示しています。
 
◆イカヨプ(「プ」は小文字)
 
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表面に彫刻を施した木製の矢筒。アシリパもこれに似た矢筒を背負っています。
 
◆マキリ&タシロ
 
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マキリはアイヌ民族が日常的に携行し、さまざまな目的で用いた小刀。アイヌ民族は金属製錬技術を持たなかったため、刃の部分は和人から買い求め、さやと柄(え)の部分に繊細な彫刻を施していました。タシロはマキリより少し大きめの山刀(やまがたな)。アシリパはこの2本を腰に提げて携行しており、肉や魚を細かく刻んだ料理「チタタプ(「プ」は小文字)」を作る時などに使っています。
 
◆ムックリ
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薄い板状にした竹を紐で引いて振動させ、口の中に反響させて音を出す「口琴(こうきん)」と呼ばれる楽器の一種。11話、アシリパが杉元を連れて自分のコタン(村)に帰ってきた場面で、村の少年が鳴らしています(コミックス2巻に収録)。
 
◆サラニプ(「プ」は小文字) 
 
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樹皮やブドウのつるで編んだ手提げ型の袋。物を運搬する際や、収穫・採集の際に携行していました。アシリパがいつも背負っています。
 
◆チンル(堅雪用かんじき)  
 
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靴に装着することで雪の上を歩きやすくする道具。アシリパは鹿革で作った靴に取り付けています。
 
◆ストゥ(制裁棒)
 
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アイヌの間で争いが起きて収拾がつかなくなった時、当事者双方が互いにこのストゥで背中を3度殴打し、喧嘩両成敗で事を収めるという風習がありました。13話(コミックス2巻に収録)でアシリパが杉元に苦情を言う場面で手にしており、その後、敵との戦いでも用いられています。
 
◆タマサイ(首飾り)
 
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儀礼や儀式の際にアイヌの女性が身に着けた装身具。中国大陸や本州との交易で入手したガラス球をつなぎ合わせたもので、胸元に金属製の飾りをつけたものもありました。悪い霊から身を守る魔よけの意味があったようです。12話(コミックス2巻に収録)で、アシリパが熊送りの儀式「イオマンテ」について杉元に説明するシーンで描かれています。
 
◆ウコ・カリプ ・チュイ(「プ」は小文字)
 
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植物のつるで作った輪を二股になった棒で受ける遊び。14話(コミックス2巻に収録)でコタンの子どもたちが遊んでいます。
 
◆番外編 「天明五年」北海道地図
 
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もうひとつ、想像をかき立てる地図が館内に展示されています。「天明五年」(1785年)と記載された北海道地図。中央付近、やや下の「仙見嶽」と書かれた部分(現在の大千軒岳)に、「金山也」の文字が読み取れます。右上の湾のようになっている部分にも「砂金」の文字があり、北海道で金が採取されていたことがわかります。杉元の砂金掘りから始まった「ゴールデンカムイ」の物語が、一気に現実とリンクしたような錯覚に陥ります。
 
北海道と樺太を舞台に、壮大なストーリーを描いてきた「ゴールデンカムイ」。すべての伏線が函館に集束しつつあります。カムイワールドにどっぷりと浸かりたいかたは、ぜひ函館で「ゴールデンカムイ」ゆかりの地巡りをお楽しみください。
 
2022/3/1公開
協力/集英社、函館市北方民族資料館、市立函館博物館、函館市中央図書館、はこだてフィルムコミッション、湯川寺
 
 
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©野田サトル/集英社
 
「ゴールデンカムイ」 公式サイト
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発行 集英社

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