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函館の冬の風物詩、ササラ電車のご紹介

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レトロな街並みを路面電車がゴトゴト走る函館は、雪景色の似合う街です。そんな雪の中、観光客の皆さんや市民の足である路面電車のスムーズな走行を支えるのが、除雪専用「ササラ電車」。現在では函館市電(函館市企業局交通部)と札幌市電(札幌市交通局)でしか見ることのできない、大変珍しいものになります。どんな電車なの? どうやって雪をかくの? いつ走っているの? 黒と黄色のゼブラ模様が目印、函館市電のササラ電車をご紹介します。
 
◆ササラ電車のササラは、なんと、台所用品のササラ! 
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これが、函館市電の軌道の除雪を担うササラ電車。正式名称は「ロータリーブルーム式電動除雪車」です。元々市電として使われていた車両を改造して、除雪専用に活用しています。例年、冬の間10日前後の稼働状況で、2021年度には13日の出動となっています。
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ササラ電車の「ササラ」とは、本来、中華鍋を洗う際に使う台所用品のこと。孟宗竹を細く割ったものを束ねたササラを、車体の前後にある「ブルーム軸」へ450束ずつ装着し、軌道上に積もった雪を豪快にはね飛ばします。
このササラ、実際に市内の金物店で台所用品として売られているものを購入するそう。孟宗竹は適度な「しなり」と「こし」があり、ナイロン製のものよりも耐久力があるほか、アスファルトを傷つけずに除雪が可能です。
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ササラ電車の心臓部とも言える「ブルーム軸」は、車内に設置されたモーターからチェーンを介して回転させます。回転数は専用のコントローラーで制御、上げ下げは車内のハンドルを使って手動で行い、軌道面に接地する面積を変えることで、レールの溝に溜まった雪も含めて除雪することができるのです。
 
◆ササラ電車の出動は、大雪の日の早朝や深夜 
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ササラ電車が除雪する姿は、一般的なラッセル車のように「かきわける」というよりも、雪を進行方向の左側へ「はねのける」という言葉がぴったり。軌道上の雪のほか、溝の中に詰まった雪まで取り除き、脱線事故やポイントが動かなくなるのを未然に防ぎ、冬季の電車の定時運行を確保するために大活躍しています。(写真提供/函館市企業局交通部
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そのほか、駒場車庫の構内や入出庫線の除雪に関しても、交通部が所有するブルドーザーとともに当たることがあります。 
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現在では、軌道上にいる電車を追い越して除雪を続けることが出来る「ササラトラック」が主力になっています。 
 
2023年には、ホイールローダーにササラを取り付けた新型が登場しました。小回りが効き、パワフルな除雪力が特徴です。
 
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とはいえ、ササラトラックの手に負えない大雪の際には、ササラ電車が出動。主に夜間や早朝のほか、稀に日中でも除雪に当たります。
 
ササラ電車は、例年は10日前後の出動ですが、最近では雪の多かった2017年度に20日、逆に雪の少なかった2019年度には1日と、年によって見られる可能性は異なります。
 
◆レトロ市電530号も雪の日に大活躍
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ササラ電車の出番が増えると、合わせて活躍するのが530号。1951(昭和26)年に製造された車両で、レトロな姿が市電ファンから愛されているほか、函館を舞台とした映画やドラマに出演することもよくあります。
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春から秋にかけては車庫で待機していることの多い530号ですが、雪の季節には、早朝などに運行している姿がよく見られます。その理由は、最近の車両に比べて車体が重いのを生かし、新雪が車に踏み固められてレールとアスファルトの間に詰まってしまう前に、持前の車重を生かして圧雪を取り除く「フランジ付け」と呼ばれる作業に当たるため。早朝に運用されたり、昼間も運行されることがあり、見た目だけでなく、雪の日の安全運行に貢献しています。
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◆函館のササラ電車は昭和10年代に運用開始
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ササラ電車は、現在の札幌市電の前身・札幌電気軌道で、台所用品の「ササラ」をヒントに開発されました。1925年(大正14年)に最初のササラ電車が札幌で登場。1931年(昭和7年)には、日本最北の路面電車として知られた旭川市街軌道でも2両のササラ電車を導入。函館では札幌のササラ電車を参考にし、1937~1940年(昭和12~15年)に、合わせて6両の電車をササラ電車「排型」へと改造しました(排は「排雪」の排)。
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現在活躍している排3号と排4号は、大正時代に東京市電(現在の東京都電)で使われていた車両を、昭和9年の函館大火の後、函館で購入したもの。最初は旅客車として運行されていました。ちなみに、レトロなデザインが人気の「箱館ハイカラ號」は、このときに改造されたササラ電車のうちの1台で、1993年(平成5年)に再び旅客車として復元されたものです。
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 ササラ電車への改造に当たっては、客車時代の雰囲気を残す木製車体はほぼそのままですが、車体側面に機器を出し入れするための大きな引き戸が設けられました。
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また、ガラス窓のついた運転台部分は取り払われ、元の客室にはデッキ部分から移設された運転台、ブルーム軸を回転させるためのモーター、チェーンなどが設置されました。車内には暖房がないため、除雪から帰ってくるころには、乗務員さんは相当体が冷えてしまうそうです。
 
◆「現存する最古の都電」として東京に里帰りしたササラ電車 
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現在活躍中のササラ電車は、1903~1906年(明治36~39年)に製造された車両をもとにした「ヨヘロ型」という東京市電(現在の東京都電)の車両がルーツ。現存するもっとも古い都電車両ということになります。排4号の天井には、1917年(大正6年)の車体新造時に張りつけられた柄つきの壁紙が、100年以上たった今も残されています。この排4号は、2011年に東京の江戸東京博物館で開かれた「都営交通100周年記念特別展」に合わせ、およそ76年ぶりに東京への里帰りを果たしました。函館を発つ際は、大型クレーンで丸ごと吊り上げて大型トレーラーに載せられ、苫小牧港で船に積み込んで川崎港へ、川崎港から両国まで陸送。事前にレールを敷設しておいた展示場所へはフォークリフトで搬入したそうです。
 
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ササラ電車が除雪に活躍するのは、大雪の早朝か深夜で、函館市民でもそうそうお目にかかることはありません。除雪に出動していないかぎりは駒場車庫で待機しているので、駒場車庫前の歩道から見ることができるかもしれません。
 
2011/11/23公開

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