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函館の歴史的建造物(1)
洒落た装飾が施された旧銀行の重厚な建物

110906J01.jpg函館の街を歩く楽しみのひとつが、歴史を経て生きつづける建物を眺めること。ハイカラな洋館や教会、古民家、和洋折衷様式の元商店、モダンなコンクリート建築......。いろいろなタイプの魅力的な建物が街並みに溶け込み、絵になる風景を生み出しています。

「はこぶら」では、函館らしさを感じさせる歴史的建造物をテーマごとにご紹介する新シリーズをスタート! 第1回は、末広町の旧金融街に建ち並ぶ、洒落たコンクリート建築の旧銀行群を取り上げます。

歴史的な建造物の魅力を知って、建物ウォッチングをしながら、街をのんびり歩いてみませんか。


◆昭和初期の銀行を再利用した旧ホテルニューハコダテ

110906J02.jpg古い銀行をホテルとして再利用する。それは、限られたロケーションに存在する建物にだけに許されるものではないでしょうか。全国各地に昭和初期以前の銀行は存在しますが、現在閉館中のホテルニューハコダテ(旧安田銀行函館支店)には、まるで映画のなかで自分が演技をしているような気持ちになる背景があります。

たとえば、映画の美しい叙情的背景を歩いている人物が、辿り着いた小さな、そして粋なホテルに入っていく。革靴の足音がカツカツと響き、重い旅行バッグを引きずって入る一室の窓には、オレンジ色の街灯に照らされた異国を思わせる街並が映る。見上げると、八幡坂と函館山の山頂が。おとぎの国に迷い込んだような錯覚をいつまでも体験できる空間......。

それは、この建物だけではありません。函館市末広町の旧金融街は、たとえば、冬の寒さの中を銀行マンがコートの襟を立ててさっそうと歩いている姿を容易に想像できる、そんな雰囲気を今でも醸し出しています。


◆個性的なデザインや装飾を競い合ったコンクリート建造物

110906J03.jpg函館の金融街は、短い距離に凝縮したように集中していました。現存する旧銀行の建物は、基坂・日和坂・八幡坂のたった3つの坂附近に、いくつも存在します。


110906Jmap.jpg基坂から順番にご紹介しましょう。旧日本銀行函館支店(現北方民族資料館)、旧第一銀行函館支店(現函館市文学館)、旧箱館貯蓄銀行本店(現SEC末広ビル)、旧安田銀行(旧ホテルニューハコダテ)、旧第百十三国立銀行本店(現SEC電算センタービル)。それぞれが独特の個性を持ちながら、旧公会堂や教会のような華やかさはないにしろ、広い電車通り付近の函館らしい景観を形成しているのは、誰もが感じることでしょう。

面白いのは、これらの銀行には地元資本設立のものと本州から進出したものがありますが、どちらも建物そのものでも負けてはいられないと競い合ったかのような、デザインや装飾の競演を行っていたことでした。それも、これらの建物が建築されたのは大正10年から昭和7年までの短い期間。その結果が個性の表出となって表れたのでしょうが、今となっては、函館になくてはならない「原風景」となっています。


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no01.jpg北方民族資料館
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no02.jpg函館市文学館
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no03.jpg旧ホテルニューハコダテ
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no04.jpgSEC電算センタービル
(各施設名をクリックすると「はこぶら」記事へ)


◆博物館・資料館として有効活用されているものも

110906J04.jpgこの旧金融街には、甘い香りがある一方で、頑固な年配者の意志の強さのようなものが凝縮された雰囲気もあります。男の野望と、ロマンと芸術と建築技術が交じり合ってできた街並み。想像してみてください。広い通りを馬車鉄道が走り、その沿道を、口髭を蓄えた蝶ネクタイ姿の紳士と、上質な絹の着物を纏った淑女が歩き、淡いランプ灯の光の影ができる......。

現在でも、この広い通りをスピードを上げて走る車は多くありません。まるで、馬車鉄道時代の速度を知っているかのような、ゆっくりとした速さで車は流れて行きます。歩道を行く者も、時折坂の風景と函館山を眺めながら、古き鉄筋コンクリートの建物のある風景に溶け込んでいきます。

急いで坂を上る必要はありません。旧銀行街の建物のよさを知ってしまったあなたは、もう観光客ではなく、旅人となったのです。旅人にはスケジュールは必要なし。入館できる建物は中に入って展示資料や内部をじっくり味わい、入館できないものは外観を写真撮影するなりして、そのよさを堪能してください。
そこには、現代の効率性を重視した考え方では決して創れない、贅沢な空間があります。函館の旧銀行街では、ほんの僅かな距離の間に、その贅沢を享受できるのです。

※記者J 2011/9/6公開(3番目と最後の写真は2009年撮影)
 マップ提供/函館西部地区バル街実行委員会


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