透明でコリッコリ! 函館自慢のいかをどうぞ
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はこだて自由市場のいか専門店・富田鮮魚店、2015年のいか漁解禁日の店先)

「身が透き通っている」「今まで食べたことがある食感と全然違う」「コリコリしている」......。函館を訪れた人が、いかの刺し身を食べた際に思わず発する言葉です。

生け簀をもつ飲食店で提供するいかは、身だけでなく、ゴロ(肝臓)も一緒に出してくれることが多く、濃厚な旨みにびっくりするはず。また、足も皿に盛りつけてくれる店では、表面の色素が微妙に変化する様子がよくわかります。口に含むと吸盤が舌につく、いわゆる「踊り食い」を楽しめるのは、獲れたての新鮮な食材であることの裏返しです。

例年6月1日には、みなみ北海道海域のスルメイカ(真いか)漁が解禁となり、シーズン中は漁船の灯す漁火(いさりび)が海上に浮かんで、夜景を幻想的に彩ります。近年は全国的にいかの水揚げが不安定といわれていますが、函館といえばやはりいか! 地元の代表的な海の幸、いかの魅力をお伝えしましょう。


◆いか釣り漁の歴史

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(函館山展望台の漁火広場からの風景)

函館近海でのいか釣り漁が本格的に始まったのは、明治初期。いか漁発祥の地とされる佐渡の漁師が、出稼ぎのため函館へ来た際、漁具や漁法を持ち込み、函館の地元漁民に広く伝えました。集魚灯の漁火は当初、船上でかがり火を焚いていたようで、漁群が沖合に移動した秋の時期のみに用いていました。

現在、大半を占めるのは9.9トンの中型船(船長約14メートル)で約40個の電球が備えられ、その明るさは120キロワット以内と、船体規模によって光力制限されています。とはいえ、月夜の下、海上に浮かぶ漁火は幻想的。函館の前浜がいか釣り船で埋め尽くされる頃には、本格的な夏の到来を市民に告げるだけでなく、函館山展望台を訪れたり、海に面した露天風呂を利用する観光客の目を楽しませてくれます。

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(豊川ふ頭に待機するいか釣り漁船)

現在の漁法は疑似餌を使った一本釣りのほか、定置網や刺し網によるもの。1955(昭和30)年頃までは、二股の竿のような「トンボ」や「ハネゴ」と呼ばれる特殊な漁具などを使用し、ドラム形の手動式釣り上げ機を経て、機械化されました。

漁火を造形する電灯も、水銀灯から白熱灯、ハロゲン灯・放電灯へと変わり、近年ではLED(発光ダイオード)の実用化に向けて一部で導入が始まりました。

また、より効率的な漁獲を目指して、北海道の試験研究機関・道立工業技術センターを中心とした産学官連携による研究開発が進行中。船体の揺れ、海流の強弱によっていか釣り機の回転数をコントロールする制御システムや、釣り鐘形状のオモリのほか、鮮度保持の酸素パックなどが商品化されています。


◆函館が「いかの街」と言われる理由

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(捕れたての真いか。透明な体に色素がくっきり)

いかの好漁場として函館近海が栄えたのには、真いかの回遊するルートが関係しています。

日本周辺に生息する真いかは、東シナ海から西日本海付近で季節ごとに産卵、発生すると推定されます。このうち、9~11月の秋生まれ群は対馬暖流に乗って日本海を、また12~3月の冬生まれ群は黒潮に乗って太平洋をそれぞれ北上。秋生まれ群は5月下旬~6月初旬頃に松前沖から津軽海峡に進路をとり、冬生まれ群は6月下旬~7月頃に恵山沖の津軽海峡に来遊します。

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函館市水産物地方卸売市場でセリにかけられる真いか)

1年魚の真いかは動物プランクトン、小魚などの餌と生存に適した水温を求めて北上し、オホーツク海、宗谷海峡付近に達した後に折り返し、産卵のため南下するときに、再び津軽海峡を通過します。そのため、漁期は6月~翌1月と他地域に比べて長め。山陰や北陸、東北地方に真いかを水揚げする港町は多くあれど、日本海と太平洋につながる津軽海峡は、両海洋を回遊する真いかが交わる資源豊富な漁場といえるでしょう。

近年は海水温の変化の影響などからか、全国的に真いかの不漁が続いていますが、原因はよくわかっていないそうです。2017年も6月に漁が始まり、前年を上回る水揚げが期待できそうとのこと。ともあれ、今シーズンも美味しいいかで多くのかたの笑顔が見られるといいですね。

新鮮さを身上とする函館のいかを支えるのは、漁船に設けられた生け簀。漁獲したばかりの真いかは、船上で氷入りの発泡スチロールや木箱などに詰められるほか、生け簀に入れたまま漁港に運ばれるものは「活いか」として流通するため、透き通った身でコリコリとした食感が身上の鮮度が保たれるわけです。


◆「朝からいかの刺し身」のぜいたく

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入舟番屋のいか刺し定食)

1989(平成元)年8月、函館市の魚に制定された真いかは、地元市民にとって身近な存在。獲れたてのいかを積んだトラックから、毎朝のようにスピーカーを通して「イガ~、イガ~(イカがなまった表現)」と売り込む声が町中にこだまする地域もあります。

朝の食卓ではさっそくいかの刺し身が並び、生姜醤油で口にするのが函館流。このほか、塩ゆでにしたジャガイモにいかの塩辛をのせたり、駅弁としても有名ないか飯、酒のつまみとして重宝される裂きいかなど、食べ方のバリエーションも豊富です。

愛着を抱くという観点から言えば、市民によって制作された「いか踊り」は、夏の一大イベント「函館港まつり」や盆踊りなどの場で踊られ、音楽を耳にすると自然に体が動いてしまうという人が多いもの。覚えやすい振りつけのため、それまで知らなかった人も容易に覚えられ、市民ともども乱舞するほどです。

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開花したサクラが散り、ふと周囲の山々に目を向けるとすっかり新緑に包まれて、夏を迎える準備が整う頃。漁の解禁をいまや遅しと待ち焦がれるいか釣り漁船は、出港に向けて船体の整備や点検に余念がありません。

松前沖から徐々に漁場を東へ移し、函館前浜で光り輝く漁火は夏の風物詩となり、海の恵みである真いかは地元住民、観光客のもとに届けられます。夏場は小型ならではの軽快な歯ごたえ、冬場は身の厚い食感と、季節によって異なる味覚を堪能できるため、バラエティーに富んだ調理法と相まって、胃袋を飽きさせることはないでしょう。


函館のいかが満喫できる飲食店

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6月からは、新鮮な真いかが味わえる季節。高級な店でなくても、居酒屋や街なかの和食の店でピチピチのいか料理が食べられます。

●豊富ないか料理をメインメニューに掲げる居酒屋「活魚料理 いか清」(五稜郭エリア)
●五稜郭タワーに入っている手軽な会席料理「四季海鮮 旬花」(五稜郭エリア)
●屋台村・大門横丁で味わういか料理「北の台所 ヤマタイチ」(函館駅前エリア)
●鮮度抜群、ゴロつきの活〆真いか刺しを賞味「炉ばた大謀」(函館駅前エリア)
●庶民が愛する海鮮料理の老舗「魚河岸酒場 魚一心」(函館駅前エリア)
●魚を知り尽くした元漁師自慢の味「居酒屋カネイワ昌栄丸 ヤン衆漁場」(函館駅前エリア)
●朝から夜まで営業の水産会社直営食堂「函館まるかつ水産 いかいか亭」(ベイエリア)
●釣りたてのいかを浜のお母さんがさばく「入舟番屋」(元町・函館山エリア)


◆自分で釣って、その場で食べる活いか釣堀も人気

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函館朝市の人気アトラクション、「活いか釣堀」でのいか釣り体験。水槽で泳ぐいかを釣り針に引っかけて釣り上げ、すぐに職人さんにさばいてもらって、ピチピチが食べられることで大人気です。料金はその日の漁の具合で変わりますが、調理代込みで1ぱい600円くらいから。⇒活いか釣堀(函館朝市イカ釣り体験)


※取材・文/hakobura 写真/hakobura、編集室M、編集室A 2017/6/5更新

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