テラスで愉しむ美食と癒し＜その１＞

■自家焙煎珈琲　ペンギンズカフェ工房

オーシャンビューの特等席！笑顔こぼれる一杯を

　住宅街の一角にひっそりとたたずみ、空の青を溶かし込んだような色の海原が目の前に広がる絶景カフェ。道南で公務員として働き、数年前に定年退職した榎波ゆかり店主が、夢だったジャズ喫茶巡りを続けるうち「自分でコーヒーの味を追求したい」と一念発起。焙煎技術を身に付けて豆売りから始め、２０２２年に自宅ガレージを改装してカフェをオープンした。

　榎波店主が“ペンギンズビーチ”と名付けた店先は津軽海峡に面し、大森浜から戸井までを一望できる。太陽の光がきらめく昼時や、周囲が少しずつオレンジ色に染まる夕暮れ時、刻々と表情を変えるパノラマの景色は、ＳＮＳなどを通じて人気を呼び、客足が絶えない。

　コーヒーはスペシャルティコーヒーを含むシングルオリジンが主力。ハンドピックで生豆を丁寧に選別し、半熱風式の焙煎機で旨みを最大限に引き出すよう中煎りに仕上げる。ブレンドは季節や日替わりほか、それぞれの好みに合わせた味わいにも対応。十勝管内の上士幌にあった名店直伝のタレで作る豚丼、本日のデザートなどもコーヒーと一緒に用意している。店先のテラス席やウッドデッキ席に腰を下ろし、寄せては返す波の音、海鳥の声に耳を澄ますと、気分も開放的に。潮風を浴びながら自慢の一杯を堪能し、心浮き立つような時間を過ごしたい。

自家焙煎珈琲 ペンギンズカフェ工房

函館市住吉町14ー1

☎070ー5066ー3838

11時～17時

火・水曜定休 （ほか不定休あり）

禁煙　駐車場あり

■ＣＡＳＡＮＯＶＡ（カサノヴァ）

水平線を目の前に体にうれしいカフェやスイーツを

　津軽海峡を背にした立地で、正面から海側まで見通せる大きなガラス窓を中央に、左右に扉が２つ。右側は洋服のリペアと古着ショップ、左側はサンドイッチやコーヒー、アルコールなどが楽しめるバルの入り口で、中でひと続きになった店内は、20世紀半ばのアメリカ・ミッドセンチュリーデザインがベースの洗練された空間と浜辺の絶景が広がる。

　テラス席では湯川方面から函館山まで遮るものなく見渡せ、水平線を独り占めしている気分に。目の前の砂浜に降りることもでき、ここで映画上映などのイベントも開催している。

　ソファでくつろげるテーブル席や窓に面するカウンター席と、どの席でも海を間近に感じられるが、特等席は店舗裏のテラス席。ドラム型の廃材に板を乗せた趣きあるテーブル席で潮風に吹かれながら味わいたいのが、蒲生貴之オーナーが大阪を中心に各地を食べ歩き考案した５種類のスパイスカレー。枝豆の紹興酒漬けやナスのモージュなど、酸味やスパイスを利かせた付け合わせと一緒に濃厚なカレーを頬張り、最後の一口まで味の変化を堪能。デザートは栄養価の高い発酵麹やスーパーフードを取り入れたヘルシーなパフェを楽しみ、身も心もリフレッシュしたい。

ＣＡＳＡＮＯＶＡ

函館市宇賀浦町７ー７

☎0138－76－1309

10時～19時半（土曜は24時まで、日曜は18時まで）

不定休　禁煙　駐車場あり

キャッシュレス決済利用可

■足湯カフェ　山の時計

冷泉に足を浸してくつろぎ、滋味豊かな卵かけご飯に舌鼓

　２０２２年に開店した、足湯と飲食が楽しめるオープンカフェ。函館で飲食店を経営していた山﨑潤社長が、田舎暮らしに憧れて雑木林を購入し、10年掛けて開墾し整備。念願のスローライフを送りながら、土・日曜の好天日のみカフェを営業し、採れたて野菜、自家製ベーコンを使った料理、スイーツやドリンクを豊富に揃え、憩いのひとときを届けている。

　ウッドデッキを中心にテーブル席やベンチを配置し、ペット同伴も可能。敷地は６０００坪ほどあり、近くには、ホタルが見られる小川もある。野営の雰囲気を生かしたフリーサイトのキャンプ場も併設。

　おすすめメニューは養鶏している〝函館地鶏〟の産みたて卵を使った「卵かけご飯セット」。米ぬか、おから、カキの殻、魚粉などをブレンドした栄養価の高い餌を与え、平飼いで育てられる鶏の卵の黄身は、ほぼ球形で濃厚な味わい。ダシしょう油と合わせて、ご飯にかけてかき込めば、シンプルな料理ゆえにごまかしの利かない素材の旨みが口いっぱいに広がる。抜けるような青空の下、ひんやりとした冷泉に足を入れ、葉を揺らしながら渡ってくる心地よい風に吹かれれば、日々の疲れも抜けていく。

足湯カフェ 山の時計

函館市旭岡町29－13

☎090ー4874ー0100

11時～16時

土・日曜の好天日のみ営業（休業はインスタグラムで告知）

喫煙スペースあり　駐車場あり

キャッシュレス決済利用可

（この記事は、フリーマガジン「ハコラク」2025年9月号から再構成したものです）