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足をのばして欲張り旅 「松前・木古内・知内・福島エリア」

木古内町の「寒中みそぎ祭り」体験記(その1)

120109M01.jpg函館近郊の木古内町は、1月13、14、15日、約180年続く伝統行事「寒中みそぎ」に沸きます。厳寒の中、4人の行修者が水ごりを繰り返し、海中でみそぎを行うという、聞くだけで震え上がりそうな真冬の荒行。毎年、町内からはもちろん、函館やその他の地域からもたくさんの人が訪れ、見守ります。

この行修にいどむのは、二十歳前後の若者たち。一般の社会人や学生から志願した行修者の勇壮な姿をこの目で見て、体感してみたいと思い、函館から南へ向かいました。

2011年1月14日、寒中みそぎ2日目の「夜の水ごり」の模様をお伝えします。


◆JR特急で、みそぎ祭り2日目へ

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木古内へは、函館から道南いさりび鉄道に乗って約1時間(当時は取材当時はJR)。1~3時間に1本程度の運行なので、電車でも思ったより行きやすい感覚です。2日目の14日は、夕方からみそぎイベントがありますが、行事や街の雰囲気をゆっくり味わうために、函館発お昼すぎの特急を利用。車窓に広がる函館山や津軽海峡を眺めているうちに、1時間で木古内に到着します。

駅前から海にまっすぐ続く「みそぎロード」は、夕方からの「みそぎ行列」を前に、まだひっそりとしています。まずは、誰もいないみそぎ浜へ。歩いて5分ほどの距離です。

明日は、ここを4人の行修者がご神体を胸に抱いて歩き、この海に進み入って「海中みそぎ」を行う......穏やかな海、明るい日差し、青い空が、明日のみそぎを静かに待っているようです。とはいえ、この時点でも気温はマイナス4℃。海風を受けると、写真を撮る素手がちぎれるように冷たくなってきます。下帯ひとつでここに立つ厳しさを想像してみると、気が遠くなりそうです。

さて、みそぎ浜をあとにして、近くの食堂「そば処 石川屋」で腹ごしらえ。おなかも落ち着いたところで、昨晩から行修者が水ごりを続けている佐女川神社(さめがわじんじゃ)に向かいます。




◆佐女川神社では、粛々と水ごりが続けられる

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行修者の鍛錬が行われる佐女川神社は、木古内駅からみそぎ浜と逆方向にゆるやかな坂を上って、山の中腹にありました。駅から歩くと、15分くらいの道のり。雪をかぶった針葉樹の山と、少し赤く染まりはじめた夕方の空を眺めながら歩いていると、のどかな里の雰囲気が感じられます。

「みそぎ祭り」の案内を見ると、「前日13日18時に参籠報告祭、14日19時にみそぎ口上・行修者水ごり」とあって、その間の説明を見かけることはありませんでした。おそらく観光で訪れる人も、記載の時間に集まるのが一般的でしょう。「最終日の15日まで、昼夜を問わず水ごりが続けられる」というのが、どのようなものなのか、初めて訪ねる者には知るすべもなし。神社に着いた16時ごろには、水ごり場はひっそりとしていました。

水をためる木槽には水が導かれ、槽の縁にかかるしめ縄や木の樋には幾筋も氷柱(つらら)が下がっています。足元の敷きわらも撒かれた水が凍り、バリバリに。

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近くでカメラをセットして立っている方に話を聞いてみると、「上の本殿から、何度も下りてきては水ごりしているよ。特に新しい人は、悩みながら自分で納得いくまでに時間がかかるから、繰り返し繰り返し、4人でやったり2人でやったりね。本殿との往復も歩く早さや姿勢が大事で、何度も確かめながらやっているよ」。

そんな話をしていると、階段上の本殿から行修者の4人が出てきて、水ごり場に向かって階段を下りてきました。美しい所作でゆっくりゆっくりと。身につけているのは下帯ではなく、真っ白な下着。気合いを入れて、1人ずつ水を浴びていきます。前を見据えて身じろぎもせず水を受ける人。激しい掛け声で水をかける人。4人全員が水を浴び、濡れた体のまま階段をゆっくり上がっていきます......。

大勢の観衆が見守るわけでもなく、ただ自己と向き合っての水ごり。祭りとしてではなく、その真の行修の一端に触れたひとときでした。



◆みそぎを見守る、アイスキャンドル、提灯、かがり火の光の競演

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4人の行修が続けられるかたわらで、町中は17時からアイスキャンドルやかがり火が灯されました。駅から浜へのみそぎロード、佐女川神社に向かう道、神社の参道、本殿への階段などはきらめく光に包まれ、みそぎを見守る人たちの気持ちが暖かく伝わってきます。特に、バケツ型に凍らせた氷のシェードにろうそくを1つ1つ置いたアイスキャンドルは、氷の容器全体が透き通って、雪の中で淡く輝き、とても幻想的。

浜に近い「みそぎ広場」には町民や観光客が集まり、提灯を手に佐女川神社までの約2km、「みそぎ行列」を行いました。かがり火の焚かれる道を練り歩く、提灯のほの明かり。美しい光の競演は、みそぎの名わき役といえそうです。


◆そして本番、夜の水ごり
 

110120reportT09.jpgみそぎ行列が神社に到着し、みそぎ太鼓、みそぎ囃子、もちまきなどがにぎやかに行われた後、19時にいよいよ行修者が登場。白い下帯を締め、頭に白い布をかぶり、たたんだ布を噛みしめ、堂々とした姿で本殿から下りてきます。

このみそぎ祭りは、佐女川神社のご神体を浜で清めて豊漁豊作を祈る伝統行事。4人の若者がその担い手となるべく、3日にわたって身を清めるために行うのが水ごりです。鍛錬の成果は、この夜の凛とした姿が物語っています。

一度水ごりするごとに、階段を上って本殿前に戻り、また下りて水ごり。1度めは背後から手桶で水をかける、2度目は自ら水を浴びる、3度目は上から少しずつ水をかけます(下3番目の写真)......。


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見守る人からは、「あのチョロチョロかけるのがいちばんゆるくないんだ。かけられるほうも、かけるほうも、見てらんないさ」と声が上がりました。写真の藤原哲朗さんはこの年初めて行修者を務めましたが、昼間見た顔とまったく違うキリッとした表情。まぶしくさえ感じられます。

冷たい水を浴びるごとに肌は赤く上気していきますが、おそらく湯気も出ないほどに冷え切った体。でも、寒そうだなどとはみじんも感じさせない心の強さに、こちらも寒さを忘れて見入ってしまいます。最後に観客にも盛大に水がかけられ、「ご利益があるね」と笑顔が広がりました。

※編集室M 2011/1/14取材、2018/12/12更新

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