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紅葉だけでなく、建物も必見。香雪園の古建築探訪
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函館で一番の紅葉の名所、湯の川温泉から車で10分ほどの高台にある香雪園(見晴公園)。見ごろは10月後半から11月上旬で、例年たくさんのかたが紅葉見物に訪れますが、園内にある古建築も、じつは隠れた見どころです。明治・大正時代に建てられた、用途や建築様式の異なる4つの建物には、それぞれに異なった魅力があります。香雪園の個性的な建物探訪にご案内しましょう。


◆香雪園について

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香雪園は、北海道内有数の呉服商であった岩船家が明治後半から大正初期にかけて別荘として整備した回遊式庭園。当初は完全なプライベートの別荘でしたが、昭和の初めには岩船家の好意で市民に無料開放され、1959(昭和34)年に都市公園としての「見晴公園」となり、2001(平成13)年には「名勝」に指定されて、北海道内唯一の国指定文化財庭園となりました。

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園路には様々な木々が植えられ、近隣の住民のにとっては、四季を通じての散歩コースとしておなじみです。

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特に秋には紅葉の名所として知られ、はこだてMOMI-Gフェスタの期間には、多くの観光客のかたが訪れます。


◆園亭~数寄屋造りの純和風建築

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敷地内の中ほどにある園亭(えんてい)は、香雪園を代表する純和風の建物。1898(明治31)年ごろの作庭当初からあり、茶室風の様式を取り入れた数寄屋造りで、屋根は函館では非常に珍しい檜皮葺になっています。

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1959(昭和34)年に函館市に移管されたのち、維持の関係で檜皮葺からトタン屋根に葺き替えられていましたが、老朽化を受けての発掘調査などを経て一度解体され、2000(平成12)年に主人の寝室や台所などが増築された大正時代の姿に復元されました。

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4月から11月まで、建物に上がって、中を見学することができます。外側にめぐらされている縁側から庭を眺めるのが醍醐味。

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縁側のガラス戸をよく見ると、ガラスに気泡やゆがみがあります。それもそのはず、建築当時に使用されていた明治・大正期の手延べガラスが使用されているのです。当時のガラス戸は、後で出てくる板倉に長く収蔵されていたのが発見され、再度取り付けられました。この味は写真ではわかりにくいので、肉眼でぜひご覧ください。

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縁側から見る庭の風景。池の周りを発掘調査した折には、末広町の名店「五島軒」の銘の入った茶碗のかけらが出たとの記録が残されています。石灯籠や島のある庭園を眺めながら、仕出し料理やお茶会を楽しんでいたのかもしれません。

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ふだんは、内側の畳の間に立ち入ることはできませんが、縁側から部屋の細部を観察することができます。襖絵や欄間などが、使われていた当時の雰囲気をよく伝えています。なお、MOMI-Gフェスタなどのイベントの際には、ここで催し物が行われることもあります。

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天井と鴨居の間にはめ込まれた欄間の透かし彫り。贅を尽くしたとはまさにこのことで、枠の部分には漆や金箔も施されています。


◆板倉~園内の資材などの保管場所

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正面入口近くの緑のセンター向かいにある、木造一部二階建ての板倉。園内の管理資材などを保管するため、大正時代に建てられたものと推定されています。保存改修工事に合わせた調査を経て、増築の行われた昭和初期の姿へ復元・整備されました。

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緑のセンター側から。そばに植えられているオオサカヅキの葉っぱは秋には真っ赤に染まり、下見板張りの壁面とのコントラストは見事。何ともいえない風情があり、絶好のフォトスポットとなります。

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窓にはめられている鉄格子が、蔵らしさを感じさせます。

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板倉の中は展示スペースになっていて、自由に入ることができます。岩船家の「久〆一」屋号の入ったのこぎりや剪定ばさみなど、園内でかつて使用された庭仕事の道具。

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香雪園の歴史を伝えるパネル。なお、2階は現役の倉庫として活用されています。


◆旧管理人住宅~木造平屋建ての住居建築

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正面口を入って緑のセンターに向かう曲がり角にある、木造平屋建ての一軒家は旧管理人住宅。その名のとおり、香雪園の管理人の住まいとして大正時代初期に建てられたと推定されています。

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現在は園内で作業されるかたの詰所として使われていて、一般のかたは立ち入り不可。外観のみ見学することができます。

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この建物で目を引くのは、庭に面して建物の周囲にめぐらされた大きなガラス戸。園亭と同じように、縁側の外側に立てられたものと思われます。


◆旧温室~レンガ造りの温室と付属棟

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洋風の赤い屋根と白い下見板張りの壁が特徴の木造一部レンガ造りの旧温室は、1908(明治41)年ごろに建てられたもの。香雪園の中で一番大きな建物です。温室としての役割を終えたのちは、香雪園の管理事務所として使われていました。

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温室部分には、本州から取り寄せたレンガや、主にイギリスなどから取り寄せたとされる大きな板ガラスが用いられています。かつては管理人が常駐し、温室内には常にスチームがたかれ、椿や盆栽、その他寒さに弱い植物が育てられていたそうです。

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温室の前方は、風当たりを少なくするために地面を掘り下げて作られた沈床式花壇となっていて、現在はバラなどが植えられています。

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温室に隣接して、木造二階建ての付属棟があります。1階には風呂場、二階には岩船家の家族が避暑の際に過ごした十畳の和室も残されているとのこと。

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2016年に公園の地下直下で発生した地震の影響で、建物がダメージを受けて、一般のかたは立ち入り不可。現在は、温室本体とともに外観のみ見学することができます。


【香雪 園内マップ】(クリック/ピンチすると拡大します)
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※記者X 2018/7~9取材、2018/9/28公開


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