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あなたのテーマでディープな函館 「アウトドア」

タモリさんが訪ねた、こだわりの函館【2】
函館山の軍事要塞跡

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タレントのタモリさんがブラブラ街歩きをし、街の魅力を探る人気番組「ブラタモリ」が、2015年に函館特集! 放送と前後して、函館のあちこちに番組のポスターが貼り出されて、街じゅう大盛り上がりでした。
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2015年6月13日(土)の放送では、「函館の夜景はなぜ美しい?」というテーマのもと、さまざまな角度から街の魅力を探っていきました。これは、夜景鑑賞スポットである函館山の山頂展望台。「ミシュラングリーンガイドジャポン」にその眺望が三つ星として紹介され、毎日たくさんの人が訪れるこの場所に、思いもかけない歴史の痕跡が残されているのです。番組に出演した案内人のご協力のもと、その秘密をご紹介します。


◆函館山には、昭和21年までの約50年、軍事要塞があった

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函館山は高さ約334メートル。100万年前の海底火山の噴火がもとになり、噴出物が積み重なってできた大きな島でした。「函館山」といっても1つの山ではなく、13のこぶ山が連なった総称であることが遠くから眺めるとよくわかります。約5000年前には対岸とつながって「陸繋島」になりました。函館山は北海道でも南部にあり、暖かい気候であることや、津軽海峡を南下・北上する渡り鳥の休息地でもあることから、多くの植物や野鳥が観察できる自然豊かな山としても知られています。

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今は山頂までロープウェイで3分、ふもとから歩いても1時間ほどで登れる身近な函館山ですが、一般市民が立ち入ることができるようになったのは、なんと1946(昭和21)年から。それまでは砲台などを備えた軍事要塞があり、立入はもちろん、撮影や模写も禁止。地図や写真から函館山が消されている時期が、50年ほど続きました。
(写真は昭和・戦前のものとされている「十字街」付近の絵葉書/函館市中央図書館所蔵。要塞司令部許可済の文字があり、函館山が見えないようになっている)

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1895(明治28)年の日清戦争終結後、南下政策をとるロシアから函館港を防御することを目的に、7年ほどを費やして函館山に大小5カ所の砲台が建設されました。そのほか、観測所や戦闘指令所など、山全体に要塞の施設が点在していて、現在、そのうちのいくつかは散策路をたどって見学することが可能になっています。大規模な軍事土木遺産の例は全国的にも珍しいことから、2001(平成13)年、「函館山と砲台跡」として北海道遺産に選定されました。
(イラストは「函館山緑地パンフレット・歴史散策ガイド/函館市土木部」より。散策路沿いに見られる要塞跡として、①御殿山第二砲台跡、②薬師山砲台跡、③入江山観測所跡、④千畳敷砲台跡が掲載されている)


◆ロープウェイで山頂へ。その真下に要塞が!

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それでは、実際に函館山の要塞跡を訪ねて散策してみましょう。山頂へは、タモリさんと同じく函館山ロープウェイで向かいました。山頂展望台まではおよそ3分、あっという間に着きます。山頂展望台には、市街地を眺めながら食事が楽しめるレストランや、みやげ品が豊富にそろったショップなどがあり、多く観光客が訪れ、にぎわいをみせています。

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その展望台の真下に、なんと軍事施設があったというのです。御殿山第一砲台という名称で、28センチ榴弾砲4門を備えて、1900(明治33)年に完成したもの。現在の山頂駐車場のあたりで、函館山に展望台ができる1953(昭和28)年までは地上に露出していました。現在は、危険防止のため、研究等の目的以外に一般者の立ち入りはできません。駐車場から漁火広場に下りる階段そばに、柵が設けられているのがその場所です。

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この日は、要塞跡の保全・活用のためのモニターツアーで、特別に見学することができました。案内してくれたのは、「ブラタモリ」にも案内人として出演した、北海道アウトドアガイドの資格をもつ木村マサ子さん。「函館山 自然ガイド(北海道新聞社刊)」の著者でもあり、山のことなら隅から隅まで知っているという事情通です。「函館山は、箱館戦争終盤の要所であり、その後の長い期間、山全体が要塞となった歴史的に重要な場所。五稜郭と並ぶ戦争遺跡で、もっと注目してほしいね」。

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入口を進むと、レンガ造りの将校室や兵舎などいくつもの部屋が残っていて、上の砲座に行く階段や通気口の跡も見てとれます。当時は電気や電話もひかれていましたが、現在は内部は真っ暗。足元は山頂整備工事の残骸であるがれきで埋まっているものの、当時の様子がうかがえる貴重な施設です。


◆山頂駅から歩いて10分、御殿山第二砲台へ

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山頂駅をあとにして、いよいよ要塞巡りの一般コースへ。旧登山道方面へ階段を下りていくと、つつじ山駐車場に出て、その向こうに御殿山第二砲台跡があります。

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駐車場から砲台跡へ向かう階段の一部は奥行がとても狭く、私の靴(26.5センチ)だとはみ出てしまいます。ここを駆け抜けるには大変だったのではないでしょうか。

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1901(明治34)年2月、遠方から侵入する敵艦船を攻撃する砲戦砲台として、28センチ榴弾砲6門が配置されました。着弾地観測(兼見張所)には砲座跡が、その周りを囲むように石垣があります。ちなみにこの大砲は演習用で、ロシアの艦隊が津軽海峡を通過した時も、第二次世界大戦で函館が空襲を受けた時も、実戦で使われたことは一度もなかったそうです。
(下の写真は大正11年に撮影されたもの/函館市中央図書館所蔵)

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この第二砲台には、2門の砲座が3カ所に分かれて、並んで配置されています。

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ところで、この石垣にあいた丸い穴。そうです、番組でタモリさんと桑子アナウンサーがあちらとこちらに分かれて、「待機せよ」「了解しました」と話をした管、伝声管です。各砲座間の指示伝達はこの伝声管から肉声で伝えられており、現在もその管が残されています。

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砲座付近の地下には砲側庫があり、階段も作られていますが、こちらには現在立ち入りできません。

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第二砲台跡を見学したら、隣接した高台の休憩施設のほうに上がってみましょう。ここはかつて観測所があったところで、周囲の海や街並みをぐるっと見渡せる地点。「ブラタモリ」の放送の最後で案内人の木村さんがタモリさんに話していたように、函館山山頂展望台を横から眺めると、平らな土地の上に建っているのがよくわかります。これは要塞建設のために山頂を削った跡なのです。函館山からの素晴らしい見晴らしは、この要塞の上に成り立っていることが実感できます。


◆さらに歩いて30~40分、千畳敷砲台跡・戦闘指令所に足を延ばす

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御殿山第二砲台跡から、比較的平坦な登山道「千畳敷コース」を歩くこと30~40分。千畳敷砲台跡が見えてきます。

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こちらにも御殿山第二砲台と同じく、28センチ榴弾砲砲座跡が見られます。

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さらに進んで高台に上がると、突如「千畳敷戦闘指令所跡」が目の前に現われます。1905(明治38)年に完成。函館山全山を見渡す円形の観測座や作戦室、司令を伝える電話室がありました。RPGゲームやアニメ映画の世界に似た雰囲気で、とても驚かされます。

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函館山にある要塞は、安全のために内部に立ち入れるところがかぎられていますが、この千畳敷指令所跡はよく整備されて、レンガ造りの施設の中まで入ることができます。中は日差しがほとんど入らず、少しひんやりとした感じ。軍事施設であったことがより実感できる空間でした。

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こちらは右翼観測所へ向かう階段。観測所で敵艦を発見すると、位置を読み取り、機器により正確な位置を算出。電話で戦闘指令所へ報告されていました。

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さて、函館山の知る人ぞ知る一面がおわかりいただけたでしょうか。山頂展望台まで引き返す前に、函館市街の眺めを心ゆくまで楽しんでください。この日は、初夏特有の海霧が街にかかっていました。


◆函館山ふれあいセンターに資料の展示があります

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函館山の要塞は、今回訪れた場所以外に「薬師山砲台跡」「入江山観測所」が現在見学できます。また、旧登山道コースの入口近くにある「函館山ふれあいセンター」では、函館要塞に関する資料や、要塞で使用されていたレンガ、28センチ榴弾砲の復元模型などが展示されており、より詳しく函館要塞の歴史などについて、知ることができます。要塞見学の際には、ぜひこちらも訪ねてみてください。

150626TT24函館要塞関連の資料など.jpg 150626TT25榴弾砲復元模型.jpg
函館市青柳町6-12(函館山ロープウェイ山麓駅から徒歩6分) 0138-22-6799
開館時間 8:45~17:30 
休館日 年末年始(12/29~1/3)
ボランティアガイド対応 10:00~14:00
※ガイドを希望の場合は、事前に電話予約を(都合により利用できない場合もあり)


案内人の木村さんによると、「タモリさんは、山を削って要塞を造ったことにとてもびっくりしていたよ」とのこと。番組収録時に用意した地図に記されていた函館山の標高は「348」。現在の334メートルと比べて、14メートルも高い、とんがり山だったといいます。函館山のもうひとつの顔、函館要塞を訪ねて、ぜひ散策路をたどってみてください。
⇒函館要塞散策マップ(函館市観光部発行)のダウンロードはこちら


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※記者TT 2015/6/21取材、7/2公開 2018/7/2更新