◆函館っ子は市場好き
函館で市場と言えば、市外の方にとっては「函館朝市」がなじみ深いと思いますし、そのほかにも地域に密着した大小の市場が点在しています。決してスーパーマーケットがないわけではなく、むしろスーパーのすぐ近所や、場所によっては文字通り隣に市場があったりします。
なぜスーパーがあっても、昔ながらの市場がそんなに支持されているのかというと、ズバリ「函館っ子は魚にうるさいから」というのが各市場の方の共通した意見。3方向を海に囲まれ、幼い頃から豊富な魚介類に囲まれて育った函館市民は、魚の品質の良し悪しや鮮度にとってもこだわります。そのため、スーパーで切り身になってトレーにパックされている魚よりも、市場で姿のまま氷の上に並んでいる魚のほうに、どうしても引かれてしまう......というわけ。もちろんスーパー側もそれは重々承知しており、どのデパートやスーパーも鮮魚売り場に力を入れていますが、やはり市場には根強い人気があります。
◆会話も楽しみのうち
市場が函館市民に支持されるもうひとつの理由は、店員さんとの会話が楽しめること。「今日は何がおすすめ?」「これどうやって食べるとおいしいの?」など、商品に関する会話もさることながら、常連客の中には「いやぁちょっと聞いてよ。うちの嫁がさあ......」とか、「孫にメールを送りたいんだけど、ケータイの使い方教えてくれる?」など、世間話を楽しみにしている方も少なくないようです。のんびりした雰囲気は函館ならではですね。
広い海岸線を持つ函館市は「沿岸漁業日本一のまち」を自称しており、市場には今朝近海で揚がったばかりの新鮮な魚介類がびっしりと並びます。種類も豊富なので、市場を歩いているときっと他地域ではあまり見掛けない魚に出会うことでしょう。そんな時は、遠慮せずに「これ、なんて魚ですか?」と尋ねてみましょう。別に買うつもりがなくっても気にしない(笑)。旅行者の特権です。ガイドブックに載っていない新たな知識をゲットして、地元に帰ってから友だちに自慢しちゃいましょう。「ねえねえ、○○って魚知ってる?」と。
また、函館の市場でお気に入りの逸品を探すためにも、会話は不可欠。店にある商品のことだけでなく、その店にない商品のことを聞いてみるのがコツです。「ウニの安い店を教えて」「たらこはどこで売ってますか?」などと尋ねてみると、同じ市場の中からおすすめの店を教えてくれることでしょう。
◆基本は値切らない
市場と言えば価格交渉、いわゆる値切りが基本のような気がしますが、函館市民の間では値切り行為はあまり一般的ではありません。ギリギリの値段の正札で勝負している店がほとんどなので、仮に「もっと負けてよ」と言っても、「これだけ安くしてるから勘弁して」と答えが返ってくることがほとんど。小さな街ならではの持ちつ持たれつの精神が根づいている函館では、店も客も互いに気持ちよく売り買いをすることが重視されているようです。
ただし、毎日全国各地および海外からたくさんの観光客が訪れる函館朝市では、そこで交される対話も楽しみのひとつです。少しでもお得に買いたい!という方は、チャレンジしてみてもいいかもしれません。ただし個人の責任でどうぞ。
◆その場で食べても送っても
「市場って丸ごとの魚とか売ってて、観光で行っても買うものないでしょ?」と思っている方、そんなことはありません。函館の主だった市場では魚をさばいて刺身にしてくれる店が多く、その場ですぐに食べることもできます。あらかじめ刺身にして店頭に並べている店もあり、飲食店の相場の半額かそれ以下で、新鮮な海の幸が味わえることも。また、市場の中にも海鮮丼の店や寿司店などがありますので、活気ある市場の雰囲気に包まれながら、函館の味を堪能できます。
また、市場で売っているのはすぐに食べなければならない鮮魚ばかりではありません。函館では海産物の加工業も盛んなため、近海産の魚やイカの一夜干し、塩辛、函館特産のガゴメ昆布で作ったおぼろ昆布、珍味など、ある程度日持ちのする商品もたくさん店頭に並んでいます。特に店頭に明記していなくても、尋ねてみると地方発送にも対応している店がほとんどですので、ぜひおみやげとして発送してみてはいかがでしょうか。
市場に行かずして、函館観光に行ってきたと言うなかれ。市民の生活に市場が深く結びついている函館で、その市場を巡る。観光でありながら、「函館で暮らすってこんな感じなのかな」と思える体験ができるかもしれません。あなただけの「市場体験」を、ぜひ見つけてくださいね。 |
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