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あなたのテーマでディープな函館 「縄文」

世界遺産登録をめざす函館の縄文世界をご案内

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ユネスコの世界文化遺産登録をめざす「北海道・北東北の縄文遺跡群」。早ければ2021年夏の登録が期待され、注目が集まっています。函館で縄文を知る旅の中心施設となる函館市縄文文化交流センター、史跡垣ノ島遺跡(整備中。2021年6月より公開予定)、史跡大船遺跡(公開中)を訪ねて、世界にアピールする縄文文化を体感してきました。函館で楽しめる縄文ワールドをご案内します。
(函館市縄文文化交流センターに隣接する「垣ノ島遺跡」の展望デッキより)


【今回訪ねた3カ所のマップ

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函館市の北東部にある南茅部(みなみかやべ)エリア。豊かな海と山の幸に恵まれ、縄文時代早期から晩期にかけて、約7千年ものあいだ、縄文文化が栄えた「縄文の里」です。函館の中心市街地からは、車で40分ほどになります。


【垣ノ島遺跡】

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国宝・中空土偶を展示する函館市縄文文化交流センター隣接の「垣ノ島遺跡」。縄文時代早期から後期(約9000~3000年前)の長期にわたって集落跡が確認されている、大変貴重な遺跡です。

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「コ」の字形に土を盛って作られた「盛り土(もりつち)遺構」を中心として、2017年から整備に着手、2021年春より一般公開される予定。

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センターの横から遺跡エリアへ。この日は、函館市の学芸員のガイドで見学しました(公開後は、時間を決めてガイドを実施予定)。この看板は、「北海道・北東北の縄文遺跡群」の構成資産である17の遺跡に設置されています。

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きれいに整備された園路を進みます。この下に遺跡が埋まっていることを想像するだけで、なんだかワクワクしてきます。

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園路には方向看板を設置。個人で散策しても、迷うことはなさそうです。公開までに、トイレなどの管理棟や体験棟が建てられるとのこと。

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周囲に比べて、少し土地がくぼんでいるこの場所は、竪穴住居の跡。

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敷地内にはクリの木が自生しています。クリの実は、縄文時代の人々にとって大切な食糧。もともと北海道には自生しておらず、縄文時代に本州から運び込まれたのではないかといわれています。

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こちらは、数日前の強風で落ちてしまった自生のクルミ。クルミもクリと同様に、当時から食糧として重宝がられていたようです。

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遺跡の端までくると、目の前には南茅部の海(太平洋)が。釣針や銛、網などを用いて漁労を行い、サケやマグロなどの魚、オットセイやクジラなどの海獣を食べていたことが、出土した骨や人骨の分析などからわかっています。

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垣ノ島遺跡の最大の特徴である「盛り土遺構」は、国内最大級。長さ190メートル、幅120メートル、高さは場所によって2メートル以上にも。盛り土の中からは、土器や石器などのほか、墓と考えられる土坑も見つかっています。

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「コ」の字形の内側の中央部分は野球のマウンドのように小高くなっていて、ここからは青竜刀形石器などの特殊な遺物が出土していることから、祭祀・儀礼が行われた特別な場所であると想像できます。

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当時の人々はここに土器などを持ってきて、「コ」の字の内側の土を掘っては盛り土を重ねていき、約1000年にわたって「送り場」として使われてきたと考えられています。


【大船遺跡】

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函館市縄文文化交流センターから車で10分たらずのところにある「大船遺跡」。縄文時代中期(約5200~4000年前)の集落群です。ここでは大型の竪穴住居跡や盛り土遺構が復元されています。管理棟では函館市内の遺跡のパネル展示があります。スタッフのタイミングが合えば、遺跡を案内してもらうことができます。団体は事前予約が必要(管理棟開館時間は4月20日~11月12日、9:00~17:00)。

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この遺跡も、海を見渡す小高い丘の上にあります。住居群が復元されている「縄文のにわ」には、大型住居を含めて約100の建物跡が確認されています。近くにはサケが遡上する大舟川が流れており、遺物からもサケを獲っていたことがわかっています。

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大船遺跡の特徴は、住居の規模がとても大きいこと。直径10メートル、深さ2メートルを超えるものも見つかっています。一度発掘を中断して保護のために埋めなおし、見学できるように再び掘り返した際には、10人の作業員で20日もかかったほど。人の身長と比べると、その大きさが一目瞭然です。

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住居跡や遺物を参考にして復元された住居。中に入ることはできませんが、中央あたりに太い柱を立て、やや細い木を組み上げて造られています。屋根は茅葺、半地下構造で外気の影響を受けにくく、夏は涼しく冬は暖かく過ごすことができます。

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杭で囲まれた円は住居跡。時期の異なる住居が重なり合っていることから、長期間にわたっての定住を示唆しています。土器の変遷とともに竪穴住居にも変化がみられ、住居そのものの形は円形から卵のような楕円形に、柱の本数や炉の形なども変わっていきました。

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長さ80メートルの盛り土遺構は、大量の土器や石器、動物の骨などのほか、火を焚いた跡が見つかっていることから、「モノ」の魂をあの世に送る葬送儀礼の場所とみられています。

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管理棟を挟んで反対側にある「縄文の森」。当時の環境の再現を目指して植樹された森には、クリやクルミなどがたくさん育っています。


【函館市縄文文化交流センター

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函館市内の遺跡で出土した遺物などを展示し、縄文にちなんだ体験学習ができる「函館市縄文文化交流センター」。北海道唯一の国宝「中空土偶」の展示室は必見。

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展示室には、たくさんの土器や石器どが並んでいます。漁労・狩猟・採集の様子を描いたパネルからも、縄文時代の生活をうかがい知ることができます。

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「北海道・北東北の縄文遺跡群」の構成資産である大船遺跡と垣ノ島遺跡で見つかった遺物には、このような印がついています。
(以下の説明 A/垣ノ島遺跡、B/大船遺跡、C/その他の遺跡)

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事前にセンターに連絡すると、スタッフによるガイドを受けることができます。

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見どころ①縄文土器の変遷
左から右へと、縄文早期から晩期までの土器が並べられています。古い時代は貝殻や縄で文様をつけていますが、時代が進むにつれ、芸術性の高い装飾や高度な製作技術が見て取れます。土器には煮炊きしていた痕跡が残されています。

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見どころ②石鏃(せきぞく)
矢の先端につけて、遠くの獣や鳥などの狩猟に使っていた石器。黒く輝く石鏃は黒曜石で作られており、多くは北海道赤井川で採掘されたものとわかっています。津軽海峡を渡った青森エリアでも、北海道産の黒曜石が多数見つかっています。

20200819MT2279.jpg見どころ③石皿と擦石(すりいし)
クリやクルミなどの木の実を「砕く」「すりつぶす」など加工するための道具。北海道で出土した「北海道式石冠」とよばれる擦石(写真左奥)には、持ち手部分がついています。(B)

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見どころ④注口土器
垣ノ島遺跡から出土したもので、漆が塗られています。光沢のある美しい赤と、デザイン性の高い文様が特徴です。(A)

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見どころ⑤海の生き物や大型動物の骨
オットセイやアシカなどの海獣、エゾシカなどの陸の動物や鳥などを獲り、食糧としてのみならず、衣服の素材、生活道具に加工してきました。これはクジラの背骨。

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見どころ⑥翡翠(ひすい)製装飾品
美しい翡翠も出土。ほとんどは、新潟県糸魚川市姫川周辺のものとわかっています。また、割れた土器の接着剤としてアスファルトが使われていました。これは秋田や新潟で採れたもの。このことから、当時から津軽海峡を越えて交易があったと考えられています。

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見どころ⑦足形付土版
子どもの足形や手形を押し付けた、粘土製の板。現在でも、赤ちゃんが生まれると足形をとることがありますが、縄文時代には誕生を祝うのではなく、幼くして亡くなった子どもの足形や手形をとり、紐を通して住居に飾って、その親が亡くなった際に一緒に埋葬したとみられています。国指定重要文化財。

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見どころ⑧国宝・中空土偶
展示順路の最後に、いよいよ「中空土偶」が登場。1975年、農作業をしていた地元市民が偶然発見、2007年に北海道で唯一の国宝に指定されました。発見された著保内野(ちょぼないの)遺跡がある南茅部地区と、内部が空洞であることにちなみ、「茅空(カックウ)」の愛称で親しまれています。(C)

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高さ41.5センチ、幅20.1センチで、国内で出土した中空土偶としては最大。造形的にも大変優れています。スポットライトに照らされ、ガラス越しですが、間近で自由に鑑賞することができます。

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中空土偶の名の通り、中が空洞になっているのがわかります。丸みを帯びたフォルムは女性を想像させますが、よく見ると顎の部分にはひげとも思える文様が。また、しっかりとした眉も男性的な印象を与えます。

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背中からもじっくり鑑賞。円と三角を組み合わせた幾何学的文様が全身に施されています。顔はやや右を見上げるように、腰は右方向に少しひねっていて、右足が前に、右肩が後ろに引かれ、人間が歩く時の特徴に不思議と合致しています。


【そのほか、函館市縄文文化交流センターでのお楽しみ】

●体験メニュー

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展示のほか、さまざまな体験学習が用意されています。受付カウンターで希望の体験メニューを申し出て、参加費を支払いましょう。この日は、組紐アクセサリーと縄文ペンダント作りに挑戦。なお、新型コロナウイルスの影響により、一部の体験メニューは休止中。自宅でできるキットの販売もあります。詳細はお問い合わせを。

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組紐アクセサリーは、5本の紐を編み込んでブレスレットやストラップに仕上げます。縄文時代はこのような組紐を使い、土器に文様をつけていたそうです。

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ペンダント作り。滑石(かっせき)という柔らかい石を、粗さの異なるやすりをかけて勾玉を作ります。

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組紐アクセサリーは約20分、縄文ペンダントは約45分で作ることができます。


●垣ノ島遺跡を一望するフリースペース

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センター内にある休憩スペースは大きなガラス張りになっていて、垣ノ島遺跡が一望できるビュースポット。飲食も可能です。

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南茅部地区にある「一松仕出し店」の中空土偶弁当。中空土偶の顔がユニークな雑穀おむすびに、南茅部地区特産の昆布やエビ、函館の「魚」であるいかの酢味噌あえなど、地元の食材をふんだんに使ったこだわりの弁当です。3日前までに予約するとセンターに届けてくれるので、ランチにおすすめです。函館市内にも配達可能。1個税込850円。
一松仕出し店 電話0138-25-3410


●ミュージアムグッズコーナーで縄文アイテムをゲット

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受付カウンター前には、ミュージアムグッズのコーナーも。中空土偶や展示品をモチーフにしたオリジナルグッズが並びます。

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センターのキャラクター「どぐう館長」のイラストがかわいいポストカード。このほか、メモ帳や付箋、ペンなどの文房具や、縄文文化交流センターの図録などが購入できます。


●併設の道の駅、縄文ロマン南かやべで、縄文クルミソフトクリーム

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日本で唯一、国宝がある道の駅「縄文ロマン 南かやべ」は、センターと同じ建物内にあります。地元特産の昆布製品や、中空土偶をモチーフにしたお菓子などを販売。ここで味わってほしいのが、道の駅オリジナル「クルミソフト」。クルミ入りのソフトクリームに、クルミパウダーをかけた、縄文らしさあふれる一品です。



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北海道の6遺跡、北東北の11遺跡、合計17の構成資産からなり、世界文化遺産の登録をめざします。函館市には史跡垣ノ島遺跡(整備中。2021年6月より公開予定)、史跡大船遺跡(公開中)の2遺跡があります。

上のロゴマークは縄文土器をモチーフにするとともに、北海道(上)と北東北(下)の形を、縄文時代のパワーを象徴するような渦巻きの形で表しています。

縄文関係のパンフレットやポスターはこちらで閲覧・ダウンロードできます。


※撮影/記者MT、取材・まとめ/編集室M、編集室SY 2020/8/19取材、10/29公開
取材協力/函館市教育委員会生涯学習部文化財課 世界遺産登録推進室、函館市縄文文化交流センター